症例報告
術前化学療法施行中に胃気管支瘻を合併した胃悪性リンパ腫の1切除例
陳 永, 佐藤 清治, 森 大輔, 枝國源一郎, 北原 賢二, 樋高 克彦, 宮崎 耕治
佐賀医科大学一般・消化器外科
胃悪性リンパ腫はそれ自体は比較的まれな疾患であるが,胃気管支瘻を伴うことは極めてまれである.今回,本疾患の1切除例を経験したので報告する.症例は81歳の女性.突然の嘔吐と食欲不振を主訴とし,精査の結果進行大腸癌と胃悪性リンパ腫の合併と診断した.CT検査にて胃の腫瘍は脾臓,膵臓,横隔膜への直接浸潤が疑われ,胃癌取扱い規約によるstage IIIaより進行した症例と判断したため,大腸癌に対する右半結腸切除術後,胃悪性リンパ腫に対し術前化学療法を施行する方針とした.化学療法施行中に胃穿孔を疑ったが,膿瘍が左横隔膜下に限局化したため化学療法を継続しえた.さらに化学療法を2クール追加後,上部消化管造影にて胃気管支瘻が判明した.化学療法施行終了後2週目に待機手術として胃全摘+脾摘+横隔膜瘻孔部合併切除にて腫瘍を切除しえた.合併症を生じながらも術前化学療法が著効を呈した症例と考えられた.
索引用語
gastric malignant lymphoma, neoadjuvant chemotherapy, gastro-bronchial fistula
日消外会誌 32: 2360-2364, 1999
別刷請求先
陳 永 〒849-8501 佐賀市鍋島5-1-1 佐賀医科大学一般・消化器外科
受理年月日
1999年4月28日
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