多発肝転移に対し術後の肝動注化学療法でCRが得られたAFP産生胃癌の1例

鈴木　康司, 渡邊　正志, 野中　博子^＊, 加瀬　肇, 戸倉　夏木, 菊池　誠, 松本　浩, 小林　一雄, 秋間　道夫^＊, 吉雄　敏文

東邦大学第1外科, 同　第1病理^＊

　症例は73歳の男性．心窩部痛を主訴に受診し精査目的で入院した．腫瘍マーカーはAFP：296. 8ng/ml，CEA 3.2ng/mlを示し，胃X線および内視鏡検査で体下部から前庭部に5型の腫瘍が認められた．腹部CTでは多発肝転移巣（H3）を認めた．手術は幽門側胃切除術（D2）を施行し，胃十二指腸動脈へ動注リザーバーを留置した．病理検査では浅い陥凹と黒色不整隆起を伴う深達度seの肝様腺癌とそれを取り囲む形で軽度隆起した深達度ssの中分化型腺癌が存在していた．免疫組織染色では肝様腺癌の部分はAFP，Albuminともに軽度陽性で，中分化型腺癌の部分はCEA，CA19-9が陽性であった．術後の血清AFP値は肝動注療法5FU 500mg/body/24hr/wの後正常化し，CTでも肝転移巣はすべて消失した．一般にAFP産生胃癌は進行癌，肝転移症例が多く予後不良であるが本症例は術後4年2か月の現在無再発生存中である．

索引用語
α-fetoprotein, intrahepatic chemothrapy, hepatoid adenocarcinoma

別刷請求先
鈴木　康司　〒143-8541　東京都大田区大森西6-11-1　東邦大学第1外科

受理年月日
1999年5月25日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です