症例報告
特発性上腸間膜静脈・門脈・脾静脈血栓症の1例
岩井 和浩, 高橋 透, 水戸 康文, 佐藤 幸作
王子総合病院外科
小腸が広範囲壊死に陥った38歳の男性の上腸間膜静脈・門脈・脾静脈血栓症を経験した.患者は上腹部痛で発症後,2日目に腸管梗塞型の急性腹症と診断し緊急手術を施行した.トライツ靭帯より肛側20cm,回腸終末部40cmを残して壊死小腸を切除し,両側断端を腸外瘻とした.術後腸外瘻粘膜に壊死は認められず,高度の浮腫が持続した.第8病日に術前のCTを再検討し門脈血栓像に気づき上腸間膜静脈血栓症を疑い,血管造影にて上腸間膜動脈の開存と上腸間膜静脈・門脈・脾静脈の血栓閉塞を確認した.即日,血栓摘除術に踏み切り小腸も同時に再建した.術後経過は順調で75病日目の血管造影で上腸間膜静脈・門脈・脾静脈の完全開通を確認した.患者の残存小腸は約50cmで術後2年の現在,約20kgの体重減少はあるが補助栄養なしで社会復帰をしている.
索引用語
mesenteric vein thmombosis, thrombectomy of portal venous system, massive resection of ileum
日消外会誌 32: 2370-2374, 1999
別刷請求先
岩井 和浩 〒053-8506 苫小牧市若草町3-4-8 王子総合病院外科
受理年月日
1999年5月25日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|