肝外発育型肝細胞癌との鑑別が困難であった転移性肝癌の1例

松本　岳^1）5）, 伊勢　秀雄^1）, 井上　晴之^1）, 矢吹　法孝^2）, 富永　現^2）, 赤羽　武弘^2）, 久保田　恒^3）, 渡辺　みか^4）, 鈴木　範美^1）, 松野　正紀^5）

石巻市立病院外科^1）, 同　内科^2）, 同放射線科^3）,
東北大学病理部^4）, 東北大学第1外科^5）

　直腸癌の根治術後9年目に発見された，極めて非典型的な転移性肝癌を経験した．症例は74歳の男性で，肝S6より肝外に突出した直径約6cmの肝腫瘍と門脈右前枝の腫瘍塞栓を認めた．直腸癌術後に長期間が経過し，肝外突出や門脈内腫瘍塞栓など肝細胞癌に比較的特徴的な所見がみられたため，肝外発育型肝細胞癌の疑いのもとに肝右葉切除を施行したところ，直腸癌の異時性肝転移であった．転移性肝癌においては，肝外に突出した形態はまれで，明らかな門脈内腫瘍塞栓を有し肝切除可能であった報告も少ない．大腸癌術後に肝辺縁部の肝腫瘍がみられた場合には，長期経過後で非典型的な進展様式であった場合にも，異時性肝転移の可能性を念頭に置く必要があると思われた．

索引用語
metachronous liver metastasis of the rectum, portal vein thrombosis, extrahepatic growing tumor

別刷請求先
伊勢　秀雄　〒986-0835　石巻市南浜町1-7-20　石巻市立病院外科

受理年月日
1999年4月28日

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