症例報告
胆道内蛔虫迷入を契機に併存する胆嚢癌を発見しえた1例
梅田 絵里子, 塩澤 俊一, 熊沢 健一, 増田 俊夫, 梅原 有弘, 加藤 博之, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎
東京女子医科大学附属第二病院外科
症例は72歳の女性で,反復する上腹部痛を主訴に当科紹介となった.腹部超音波検査および造影computed tomography(CT)検査では胆嚢頸部に辺縁不整な分葉する約2cm大の隆起性病変を認めた.Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography(ERCP)では総胆管内に運動性のある1本の紐状の透亮像が描出された.胆道内寄生虫迷入症および胆嚢癌と診断し,寄生虫摘出と胆嚢摘除術および胆管,肝床切除を施行した.病理組織学的診断では腫瘍はpapillary adenocarcinoma,深達度ss,hinf0,binf0,n0,stage II,根治度Aであり,虫体は体長約15cmの雌蛔虫であった.本症例は無石例であり,初発症状の上腹部痛は胆道内に迷入した蛔虫が原因と考えられ,迷入を契機に併存する胆嚢癌が比較的早期に発見された貴重な症例と考えられた.
索引用語
cancer of the gallbladder, biliary ascariasis
日消外会誌 32: 2390-2393, 1999
別刷請求先
梅田 絵里子 〒116-8567 東京都荒川区西尾久2-1-10 東京女子医科大学第二病院外科
受理年月日
1999年4月28日
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