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第32巻 第10号 1999年10月 [目次] [全文 ( PDF 131KB)]
症例報告

糞瘻より生じた巨大瘻孔癌の1例

安部 哲也, 畦倉 薫, 平松 聖史, 上野 雅資, 太田 博俊, 高橋 孝, 柳沢 昭夫, 加藤 洋

癌研究会付属病院外科, 癌研病理

 患者は68歳の男性.主訴は下腹部腫瘤.理学的所見で糞瘻を中心に大きさ200×120mmの弾性硬の腹部腫瘤を認めた.大腸X線造影検査でS状結腸に壁外性圧排による全周性狭窄を認めた.腹部CTで不整形腫瘍の内部は不均一であり,ガス像を認めた.腹部MRIでは両側総腸骨動静脈,直腸への浸潤は認めなかった.腫瘍の生検では高分化型腺癌の診断が得られた.以上より,糞瘻から発生した巨大瘻孔癌の診断でHartmann手術,腹壁合併切除,恥骨部分切除,両側大腿筋膜張筋筋皮弁で腹壁再建を施行した.切除標本では腫瘍は瘻孔を中心に存在し,皮膚面とS状結腸との間に瘻孔を認めた.病理では結腸の粘膜面に原発部位が存在しないことから糞瘻原発の癌と診断された.糞瘻より発生した瘻孔癌の報告は自験例を含め3例とまれで,腹部腫瘤を主訴とし,切除不能例が多く,根治切除できた症例は3例中自験例のみであった.

索引用語
fistula cancer, fecal fistula

日消外会誌 32: 2394-2398, 1999

別刷請求先
安部 哲也 〒170-8455 東京都豊島区上池袋1-37-1 癌研究会付属病院外科

受理年月日
1999年5月25日

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