浸潤性膵管癌に対する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術（PpPD）の意義と問題点：胃切PDとの比較

細谷　亮, 土井　隆一郎, 今村　正之

京都大学腫瘍外科（第1外科）

　過去17年間に経験した浸潤性膵管癌の肉眼的治癒切除症例のPD施行84例とPpPD施行16例を対象に短期と長期手術成績から両術式を比較検討した．総合的根治度A・Bが得られた症例はPpPD例が75.0％，PD例が70.2％と両群間に有意差がなかった．胃周囲リンパ節転移は対象症例全体で＃6が8例に認められたが，PpPD例に組織学的＃6リンパ節転移例はなかった．合併症発生率と入院死亡率もPpPD例とPD例に有意差なかった．予後因子の多変量解析では術式は有意の予後因子ではなく，単変量解析でもPpPD例とPD例に有意差を認めなかった．しかし，術後の体重変化や栄養指標（Hb値，T-Chol値，Alb値）はPpPD例がPD例より有意に良好であった．今回の解析結果からは，PpPDは根治性を損なわずに機能を温存する術式であり，浸潤性膵管癌に対してもPpPDの適応を拡大できると考える．

索引用語
pancreatoduodenectomy, quality of life, treatment outcome

別刷請求先
細谷　亮　〒606-8507　京都市左京区聖護院川原町54　京都大学腫瘍外科

受理年月日
1999年7月28日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です