Stage IVa膵頭部癌に対するPpPDの適応拡大は妥当性があるか？

高尾　尊身, 新地　洋之, 愛甲　孝

鹿児島大学第1外科

　1980～1997年間の膵頭部癌83切除例を対象として，stage IVaに対する幽門輪温存膵頭十二指腸切除術（PpPD）の適応を検討した．Stage IVaに対して総合的根治度Bが膵頭十二指腸切除術（PD），PpPD，膵全摘術（TP）でそれぞれ58％，75％，55％に施行されたにもかかわらず5年生存率は　3％と不良であった．後腹膜浸潤，神経叢浸潤の有無にかかわらず3術式間の累積生存曲線に有意差は無かった．腫瘍進展様式からみるとPpPDは膵前方被膜浸潤例には採用されていなかった．PDとPpPDの再発率，再発形式に差は無く，拡大郭清の局所再発に対する抑制効果はあるものの，生存率への効果が乏しく，予後不良の要因は肝転移再発であった．すなわち，切除可能な膵頭部癌では胃周囲リンパ節転移が極低率であるため，拡大郭清を伴うPpPDを選択することでQOLを保持した積極的な肝転移対策が可能となる．したがって，前方進展例を除くstage IVaに対するPpPDの適応拡大は妥当性があると考えられる．

索引用語
invasive ductal adenocarcinoma of the head of the pancreas, pylorus-preserving pancreaticoduodenectomy, Stage IVa pancreatic cancer

別刷請求先
高尾　尊身　〒890-8520　鹿児島市桜ケ丘8-35-1　鹿児島大学医学部第1外科

受理年月日
1999年7月28日

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