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第32巻 第10号 1999年10月 [目次] [全文 ( PDF 49KB)]
特集

胸部食道癌に対する至適リンパ節郭清:適応の個別化とstep-upの見地より

河野 辰幸, 永井 鑑, 井上 晴洋, 出江 洋介, 中村 正徳, 奈良 智之, 熊谷 洋一, 中島 康晃, 吉野 邦英, 岩井 武尚

東京医科歯科大学第1外科

 深達度M3以上の胸部食道癌では頸,胸,腹部の何れにも転移する可能性があることから,外科的治療を行う場合,原則は3領域郭清を伴う切除再建術としてきた.1985年から1997年までの切除再建例のうち627例では系統的リンパ節郭清を行い,3領域郭清を293例に施行したが,334例では,術前の頸部エコーによるリンパ節転移診断,病巣の深達度や広がりの詳細,上縦隔リンパ節転移の有無,患者の全身状態などを考慮して,胸,腹部の2領域ないし2領域と頸部の一部のみを郭清した.5生率はそれぞれ,28.8%,47.9%と2領域群で高い値であったが,両群の背景には根本的な相違があった.表在癌における頸部再発例の分析からは,適切な経過観察と治療がなされれば長期予後に影響する決定的な因子ではないことが示された.頸部郭清は局所に対する制御法として勝れているが,臨床的に転移陰性と推測される例における頸部郭清の意義は低く,個別的に郭清の適応を考慮しても良いと考える.

索引用語
thoracic esophageal cancer, lymphadenectomy, individualization and step-up

日消外会誌 32: 2479-2483, 1999

別刷請求先
河野 辰幸 〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学第1外科

受理年月日
1999年7月28日

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