症例報告
食道に対するexpandable metallic stent留置が気管狭窄を増悪させた1例
上田 通雅, 岡本 秀樹
公立村岡病院外科
症例は82歳の女性.1996年8月,集団検診にて胸部異常影を指摘された.精査にて縦隔浸潤を伴う右肺癌と診断.患者,家族の希望にて積極的治療は行わず,経過観察していた.1997年3月より嚥下障害が出現,同年3月末には経口摂取不能となり入院した.精査にて肺癌縦隔浸潤による食道狭窄と診断,expandable metallic stent(以下,EMS)を留置した.EMS留置により経口摂取良好となり退院したが同年5月より呼吸困難が出現,精査にて気管狭窄と診断.急激に症状が進行したためEMSを留置した.EMS留置により呼吸困難は改善し退院したが同年7月,肺炎により死亡された. 手術不能な癌性食道および気管狭窄に対しEMSは患者のQOLを改善する可能性がある.しかし食道狭窄におけるEMS留置では気管狭窄を進展させる可能性があり注意が必要である.
索引用語
esophageal stenosis, tracheal stenosis, expandable metallic stent
日消外会誌 32: 2538-2542, 1999
別刷請求先
上田 通雅 〒667-1311 兵庫県美方郡村岡町村岡3036-1 公立村岡病院外科
受理年月日
1999年5月25日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|