症例報告
魚骨による胃穿通に続発した大網膿瘍の1例
並川 努, 中村 生也, 近藤 雄二, 山下 邦康, 宮崎 純一*, 荒木 京二郎**
高知県立西南病院外科, 同 病理*, 高知医科大学第1外科**
症例は67歳の女性.1997年4月中旬より腹痛あり,心窩部痛が持続するため4月25日当院を受診した.上腹部に圧痛,反跳痛を認め,白血球数11,130/mm3,CRP 18.6mg/dlであった.遊離ガス像は認められず,超音波検査にて臍上部に,内部に高輝度エコーを有する低エコー病変を認め,CT検査で同部位は,周囲がiso densityで内部に細長いhigh density部位を伴うlow densityを呈した.以上の所見より,消化管穿孔による腹腔内膿瘍形成の診断にて,手術を施行した.胃前庭部は肥厚し浮腫状で,大網膿瘍を認め,幽門側胃切除術を施行した.切除標本で大網膿瘍の中に長径4.5cmの魚骨が発見され,病理組織学的に胃幽門部の粘膜下から漿膜にかけて帯状の膿瘍と,漿膜下に広く好中球浸潤がみられ,魚骨が穿通した部位と考えられた.魚骨により胃穿通をきたすことは非常にまれであるが,誤嚥魚骨により胃穿通をきたし大網膿瘍を形成した1例を経験したので報告する.
索引用語
gastric penetration, fish bone, great omental abscess
日消外会誌 32: 2553-2557, 1999
別刷請求先
並川 努 〒787-0785 宿毛市山奈町芳奈3-1 高知県立幡多けんみん病院外科
受理年月日
1999年6月22日
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