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第32巻 第11号 1999年11月 [目次] [全文 ( PDF 85KB)]
症例報告

受傷後17年を経て発症したと思われる遅発性外傷性腹壁ヘルニアの1例

後藤田 直人, 板野 聡, 堀木 貞幸, 寺田 紀彦, 児玉 雅治

医療法人寺田病院外科, 児玉胃腸科肛門科

 患者は72歳の女性.55歳の時に交通事故で骨盤を骨折.3年前よりときどき右下腹部痛,下痢がみられ,当院を受診.触診では右下腹部から側腹部にかけて圧痛を認めたが,腹膜刺激症状はなく,腫瘤も触知しなかった.その後も症状が続くため平成10年に注腸造影X線検査(以下,注腸Xp),Computed tomography(以下,CT)を施行し,上行結腸の腹腔内からの脱出を認めた.腰ヘルニアを疑い,手術を行うも胸腰筋膜のレベルで,外腹斜筋の中に腸骨稜を下端とした直径4cmの欠損部があり,上腰三角,下腰三角は脆弱でないため,腰ヘルニアではなく,17年前の外傷による腹壁ヘルニアと診断,周辺組織を縫合することで欠損部を閉鎖した.術後は良好に経過中である.外傷性腹壁ヘルニアは鈍的,鋭的損傷,または介達外力による損傷の結果生じるヘルニアである.受傷後まもなく発生する場合と遅発性に発生する場合があるが,後者はその中でもまれといわれている.自験例では注腸Xp,CTがヘルニアの存在診断に有用であると考えられた.

索引用語
traumatic abdominal wall hernia, lumbar hernia

日消外会誌 32: 2596-2600, 1999

別刷請求先
後藤田 直人 〒518-0441 名張市夏見3260-1 寺田病院外科

受理年月日
1999年5月25日

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