直腸，S状結腸を占居しelectrolyte depletion syndromeを呈し広範囲にm癌を伴った絨毛腺腫の1例

佐々木　裕茂, 林　勝知^＊, 鬼束　惇義^＊

録三会太田病院外科, 岐阜大学第1外科^＊

　われわれは最近，electrolyte depletion syndromeを呈し，広範囲にm癌を伴った巨大な大腸絨毛腺腫を経験したので報告する．
　症例は55歳の男性で，40歳代より頻回に下痢を認めていた．今回も，数日来の下痢，嘔吐が続き当院を受診した．入院時，血圧70/40mmHg，脈拍104/分，血液検査にてNa 127mEq/l，K 3.1mEq/l，Cl 72mEq/l，BUN 85.1mg/dlと脱水によるショック，Na，K，Clの中等度の低下，高BUN血症を認めた．大腸内視鏡所見では，歯状線より3cm口側の直腸からS状結腸にかけて絨毛腫瘍を認めた．同腫瘍の生検では，腺腫内に高分化腺癌を伴っていた．腹会陰式直腸切断術を施行した．摘出標本所見では，直腸からS状結腸にかけて26×13cmの絨毛腫瘍を認めた．病理組織学的所見では，同腫瘍は絨毛腺腫で，腺腫全体にm癌を伴っていた．n（－），P₀，H₀，M（－），stage 0であった．術後4年の現在，再発を認めていない．

索引用語
villous adenoma of the large bowel, electrolyte depletion syndrome, colorectal carcinoma

別刷請求先
佐々木　裕茂　〒505-0041　美濃加茂市太田町2825　太田病院外科

受理年月日
1999年7月28日

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