症例報告
悪性腹膜中皮腫の2例
笠倉 雄一, 藤井 雅志, 望月 文朗, 間崎 武郎, 岩井 重富, 山田 勉*
日本大学第3外科, 同 病理*
悪性腹膜中皮腫を2例経験した.2例はともにアスベスト暴露歴があり,1例は肺アスベストーシスと認定されていた.2例はともに多量の腹水貯留を認め,腹部膨満と腹痛が主訴であり,腹水はともに黄緑色で粘調度が高く,細胞診により中皮腫が強く疑われた.術前の確定診断は困難とされており,腹水が貯留する疾患,特に癌性腹膜炎との鑑別が重要であり腹腔内臓器の精査により除外診断が必要であった.2例はともに臨床的分類ではびまん型,組織型では上皮型であった.1例は回腸に狭窄を認め,他の1例は温熱療法にて効果なく,抗腫瘍剤の投与のためにともに開腹術が行われた.cisplatineとetoposideの腹腔内投与は腹水貯留に対しては有効であった.しかし現在本疾患に対する有効な治療法はなく,予後は極めて不良であり,今後遺伝子治療や免疫療法を含めた新たな集学的治療の検討が必要である.
索引用語
malignant peritoneal mesothelioma
別刷請求先
笠倉 雄一 〒173-8610 板橋区大谷口上町30-1 日本大学第3外科
受理年月日
1999年9月22日
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