症例報告
幽門輪保存胃亜全摘術後6か月目に発症したビタミンB1欠乏による脚気ニューロパチーの1例
岩瀬 和裕1), 桧垣 淳1), 三方 彰喜1), 田中 靖士1), 吉川 正人1), 岸本 朋乃1), 鳥飼 慶1), 豊岡 圭子2), 弓場 健義3), 上池 渉1)
りんくう総合医療センター市立泉佐野病院外科1), 同 神経内科2), 大阪大学大学院機能制御外科3)
幽門輪保存胃亜全摘術後6か月目にビタミンB1欠乏による脚気ニューロパチーを発症した1例を報告した.症例は32歳の男性で,胃癌に対して幽門輪保存胃亜全摘術を行い噴門形成を付加した近位側空腸パウチ間置法にて再建した.退院後飲酒せず食事内容に偏食は認められなかったが,術後3か月目の腹部CT検査では間置空腸の著明な拡張が認められた.術後4か月目頃より経口摂取は順調に進んだが,術後6か月目に靴下型知覚障害ならびに下肢遠位筋優位の筋力低下が認められた.神経生理学的検査では腓腹神経の感覚神経活動電位消失が認められ,血中ビタミンB1値は11(正常値20~50)ng/mlと低値であった.ビタミンB1の投与により症状は軽快した.胃切除術後に上部消化管内容のうっ滞を併発した場合には,ビタミンB1欠乏の可能性をも念頭に置く必要があると考えられた.
索引用語
Vitamin B1, neuropathy, gastrectomy
別刷請求先
岩瀬 和裕 〒598-8577 泉佐野市りんくう往来北2-23 りんくう総合医療センター市立泉佐野病院外科
受理年月日
1999年9月22日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|