症例報告
下部胆管原発印環細胞癌の1例
広利 浩一, 原 隆志, 山崎 左雪, 河島 秀昭, 石後岡 正弘, 細川 誉至雄
勤医協中央病院外科
非常にまれな下部胆管原発の印環細胞癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は57歳の男性.糖尿病のため経過観察中,血糖コントロール不良,胆道系酵素上昇を認めた.腹部CTでは膵頭部から十二指腸下行脚に突出する1.5cm大の腫瘤を認めた.ERCPでは下部胆管の不正狭窄像,その上流および主膵管の拡張像,また,乳頭部の著明な腫大がみられ,生検の結果は印環細胞癌であった.乳頭部癌の術前診断にて膵頭十二指腸切除術を施行.肉眼所見はVater乳頭近傍の総胆管に約1.5cmの結節型の腫瘍を認め,組織学的に同部は印環細胞癌であり,下部胆管において高分化型管状腺癌が上皮内を進展し,また胆管壁在の神経浸潤を主とする形で肝側に著しく広がり肝側胆管断端陽性であった.胆管腔内照射および外照射を追加し,術後1年の現在,生存中である.このような胆管原発の印環細胞癌は,特に胆管壁内進展を十分に考慮し,診断,治療を行うことを要する.
索引用語
extrahepatic bile duct cancer, signet-ring cell carcinoma, neural invasion of bile duct cancer
別刷請求先
広利 浩一 〒653-0041 神戸市長田区久保町2-4-7 神戸協同病院外科
受理年月日
1999年10月22日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|