症例報告
Waldeyer輪と異時性に重複発生した空腸悪性リンパ腫の1例
二上 文夫, 小西 一朗, 千田 勝紀
国立山中病院外科
症例は70歳の男性.主訴は腹部膨満,腹痛,嘔吐.2年前に右扁桃原発悪性リンパ腫(stage I)にて治療を受け完全寛解をえた.腹部単純X線で小腸ガスを認め,イレウス管を挿入し症状は消失したが,造影にて空腸に境界が比較的明瞭な狭窄像を認め,小腸悪性腫瘍を疑い手術を施行した.Treitz靭帯より150cmの空腸に,肉眼的奬膜浸潤陽性の腫瘍を認め,リンパ節郭清を伴う小腸部分切除を行った.腫瘍は70×45mmのBorrmann 2 型様で,組織学的にdiffuse,medium-sized cell,B cell typeの悪性リンパ腫と診断された.深達度はseで,リンパ節転移は認めなかった.悪性リンパ腫がWaldeyer輪と消化管に重複発生することが知られているが,自験例のごとき空腸病変の報告はこれまで認めていない.小腸悪性リンパ腫とくに深達度seの予後は不良とされ,術後 6 か月の現在,化学療法を施行し厳重フォローアップ中である.
索引用語
malignant lymphoma of the jejunum, Waldeyer's ring, metachronous malignant lymphoma
別刷請求先
二上 文夫 〒922-0193 石川県江沼郡山中町上野町ル15-1 国立山中病院外科
受理年月日
1999年9月22日
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