臨床経験
肝細胞癌に対する内視鏡的経鼻胆管ドレナージによる胆管クーリング下マイクロ波凝固療法の経験
別府 透, 山本 謙一郎, 広田 昌彦, 山口 康雄, 比企 裕, 松田 貞士, 石河 隆敏, 前田 誠士*, 藤山 重俊*, 小川 道雄
熊本大学第2外科, 熊本大学第3内科*
内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(endoscopic naso-biliary drainage:ENBD)による胆管クーリング下経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)を試行した.症例は60歳の女性.後区域グリソン鞘に近接した20×17mmの高分化型肝細胞癌を認めた.C型肝硬変を合併しており,臨床病期はII期であった.ENBDチューブから冷却した生理食塩水の注入と吸引を繰り返すことにより胆管をクーリングした.1.6mmの深部針で60W,30秒凝固の条件で5回のPMCTを試行した.術後に一過性の高アミラーゼ血症を認めたが,保存的に治癒した.治療後の造影CTでは血管損傷を認めることなく,腫瘍は周囲肝組織を含めて直径30mmの造影効果のない低吸収域となった.胆管についてはMRCPで経過観察を行っているが,狭窄や拡張を認めていない.術後半年の現在,無再発生存中である. 本法は肝内グリソン鞘に近接した肝細胞癌治療における新しい選択肢となりうる.
索引用語
percutaneous microwave coagulation therapy, endoscopic naso-biliary drainage, biliary tract cooling
別刷請求先
別府 透 〒860-8556 熊本市本荘1-1-1 熊本大学医学部第2外科
受理年月日
1999年9月22日
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