胸部食道癌切除術後合併症に対する術前補助療法の影響

堤　謙二, 宇田川　晴司, 木ノ下　義宏, 上野　正紀, 中村　豊英, 澤田　寿仁, 渡辺　五朗, 秋山　洋, 鶴丸　昌彦^＊, 梶山　美明

虎の門病院消化器外科, 順天堂大学医学部第1外科^＊

　食道癌手術において術前補助療法が術後合併症に与える影響を検討した．1984年から1997年までの3領域リンパ節郭清を伴う手術を行った胸部食道癌636例中，術前補助療法群113例：化学療法群（以下，CT）52例，放射線療法群（以下，RT）53例，化学放射線療法群（以下，CRT）8例と術前無治療群（以下，SA）523例を対象とした．肺炎はCRT（37.5％）とSA（8.7％）間に有意差を認め（p=0.028），腸炎もCRT（37.5％）とSA（4.4％）間に有意差を認めた（p<0.001）．MRSA感染，不整脈，肺水腫，高ビリルビン血症，縫合不全，術死に有意差はなかった．CRTは治療前後での末梢血リンパ球数の有意な減少を認め，ロジスティック回帰分析でも有意な肺炎のリスクファクターとなり，免疫系に対する影響が大きいものと推定された．したがって，術前化学放射線療法の患者は免疫機構の低下を想定し対処する必要があると考えられた．

索引用語
esophageal cancer, neoadjuvant therapy, chemoradiation therapy, postoperative complication, mortality

別刷請求先
堤　謙二　〒105-8470　東京都港区虎ノ門2-2-2　虎の門病院消化器外科

受理年月日
1999年11月30日

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