症例報告
門脈ガス血症をきたした回腸壊死の1治験例
有賀 浩子, 野池 輝匡, 河西 秀, 小池 秀夫
相澤病院外科
症例は76歳の女性.突然に発症した腹痛と嘔吐を主訴として来院した.腹部は膨満し圧痛のみで腹膜刺激症状は認められなかったが,腹部CT検査で腹水および肝臓両葉に門脈ガス像と小腸の拡張,小腸壁内のガス像,小腸腸間膜血管内と思われる部位にガス像を認めた.門脈ガス血症をきたした腸管壊死と判断し,開腹術を施行したところ40cmの壊死腸管を認めたため切除し端々吻合とした.病理組織結果は虚血による腸管壊死で,術後経過は良好であった.門脈ガス血症は比較的まれな疾患であり,虚血性腸疾患に伴うことが最も多く本症例の発生機序は腸管潰瘍部から腸内細菌が門脈内へ移行した敗血症の一徴候と考えた.本邦報告例94例を検討すると,予後不良の疾患とされていたが近年,救命症例数は増加しており,早期の診断と原因疾患の検索および治療が重要と思われる.
索引用語
sepsis, hepatic portal venous gas, bowel necrosis
別刷請求先
有賀 浩子 〒390-8510 松本市本庄3-1-1 相澤病院外科
受理年月日
1999年11月30日
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