原発性肝癌に対する腹腔鏡下肝切除術の経験

金子　弘真, 高木　純人, 大塚　由一郎, 吉野　正晃, 城原　直樹, 土屋　勝, 田村　晃, 石井　貴士, 柴　忠明

東邦大学第2外科

　原発性肝癌に対し腹腔鏡下肝切除を施行し，その手術手技や適応について検討した．手術手技：肝実質切離にはマイクロ波凝固装置と高周波凝固機能内臓超音波吸引装置の併用やハーモニックスカルペルを使用する．視野展開はCO2塞栓の危険性から気腹を避け腹壁つり上げ法にする．脈管切離にはクリッピングを，グリソンや肝静脈などの太い脈管には腹腔鏡用自動縫合器を使用する．結果：肝部分切除術7例，肝外側区域切除術2例に試み，1例は止血のため開腹術に移行したが，8例は安全に施行できた．手術時間，出血量は通常の開腹術と差がなかった．術後疼痛は軽微で，回復も早く，経過も良好であった．適応：高度肝硬変は原則的に除外，系統的肝切除は外側区域切除を除き適応外とし，腫瘍径は5cm以下，部位は肝下区域の表面や辺縁，外側区域に局在するものが適応となる．原発性肝細胞癌に対しても，腹腔鏡下肝切除は根治性と低侵襲を兼ね備えた外科治療の1手段になるものと考える．

索引用語
laparoscopic hepatectomy, hepatocellular carcinoma, hepatectomy

別刷請求先
金子　弘真　〒143-0051　東京都大田区大森西6-11-1　東邦大学第2外科

受理年月日
1999年11月30日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です