特集
術中骨盤腔洗浄液のRT-PCR解析による直腸癌進行度評価の検討
冨田 尚裕, 多田 正知, 関本 貢嗣, 大植 雅之, 大西 直, 森田 哲史, 池永 雅一, 三宅 泰裕, 松浦 成昭*, 門田 守人
大阪大学大学院医学系研究科病態制御外科学(第2外科), 大阪大学医学部保健学科病態生体情報学講座分子病理学*
直腸癌手術では直腸剥離操作時の側方向脈管離断に伴う癌細胞漏出の可能性があり,側方リンパ節転移との関連等が推測されるが,その実際および臨床的意義は不明である.そこで近年単離された消化管上皮細胞特異的遺伝子マーカーGS04094を用いたRT-PCR法にて骨盤腔遊離癌細胞を検出し,臨床病理学的因子との関連を検討した.直腸癌14例の開腹時(pre),直腸剥離操作終了時(post)の骨盤腔を生食100mlで洗浄,細胞診と共にRNA抽出,GS04094のRT-PCR解析を行った結果,陽性症例を 5 例(pre(+),post(+):4例,pre(-),post(+):1例)認めた.RT‐PCR陽性と壁深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲(v),およびpre(+)においては腫瘍の局在(Ra)とに有意の相関を認めた.直腸癌の術中洗浄液を用いたGS04094のRT-PCR解析により側方向への脈管離断による漏出癌細胞,また腹膜翻転部以上の癌においては漿膜表面への遊離癌細胞を高感度に検出できる可能性があり,直腸癌の進展度評価,術式決定における有用性が示唆された.
索引用語
colorectal cancer, RT-PCR, molecular staging
別刷請求先
冨田 尚裕 〒660-8511 尼崎市稲葉荘3-1-69 関西労災病院外科
受理年月日
1999年12月22日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|