特集
胃癌の腹膜播種性転移能に影響する因子の分子生物学的検討
井上 透, 八代 正和, 西村 重彦, 松岡 翼, 山下 好人, 山田 靖哉, 澤田 鉄二, 仲田 文造, 大平 雅一, 平川 弘聖
大阪市立大学第1外科
胃癌腹膜播種転移の形成過程には,癌細胞の胃壁深層への浸潤,漿膜面からの剥離,腹膜への接着・浸潤というステップが必要である.今回,腹膜播種転移の各ステップに関与する因子を,教室で樹立されたスキルス胃癌由来の高腹膜播種転移株,腹膜中皮細胞株,腹膜線維芽細胞株を用い,分子生物学的な観点からin vivo,in vitroで検討し,以下の結論を得た.すなわち,癌細胞の原発巣からの離脱には,MMP-1産生亢進やE‐Cadherin発現低下が関与し,さらに腹腔内に遊離した癌細胞が腹膜に着床するには,癌細胞の発現する接着分子CD44Hや,α2β1-,α3β1-integrinが関与していることが示された.また,癌細胞により,腹膜に線維芽細胞増生がおこり,この増生が癌細胞の浸潤能や中皮細胞形態に影響を及ぼし,癌細胞の転移に有利に働いていることが示唆された.
索引用語
scirrhous gastric cancer, peritoneal dissemination, adhesion molecule
別刷請求先
井上 透 〒545-8585 大阪市阿倍野区旭町1-4-3 大阪市立大学医学部第1外科
受理年月日
1999年12月22日
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