特集
原発性および転移性肝癌に対する遺伝子治療の研究 ―転移性肝癌に対する治療戦略―
林 衆治, 中尾 昭公
名古屋大学医学部第2外科
消化器癌治療上の大きな問題として,肝転移が挙げられる.本研究において,我々は肝転移制御に対する遺伝子治療の有用性に関して検討した.アデノウイルスベクターを用いて,tissue plasminogen activator(tPA),interleukin 10(IL10),I kappa beta(IKB)遺伝子を腫瘍組織,肝臓へ導入し肝転移抑制効果を検討するとともに,抗癌剤との併用効果を検討した.その結果は,1)tPA,IL10遺伝子を用いた腫瘍組織,肝臓への遺伝子導入により,肝転移が抑制されること,2)IKB遺伝子とCDDPを併用した場合,肝転移抑制に相乗効果を示すこと,が明らかとなった.以上から,肝転移制御のための,腫瘍組織および肝臓に対する遺伝子治療は,新しい治療手段として有用であると示唆された.
索引用語
gene therapy, hepatic metastasis
別刷請求先
林 衆治 〒466-8560 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学医学部第2外科
受理年月日
1999年12月22日
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