特集
膵臓癌の浸潤転移機構の解析:癌細胞解離因子の解析
江上 寛, 林 尚子, 栗崎 貴, 甲斐 幹男, 高井 英二, 多森 靖洋, 赤木 純児, 廣田 昌彦, 小川 道雄
熊本大学第2外科
膵臓癌の転移機構を明らかにする目的で,BOP誘導実験膵癌組織から樹立した高転移株(PC-1・0)培養上清中に存在する癌細胞解離因子(DF)分離精製し,その本態と膵癌の浸潤転移機構との関連について解析を行った.DFの精製を進め構成アミノ酸解析を行った結果,DFは新しいタイプのmetalloproteaseあるいはムチン様の構造をもつFc binding proteinであることが示唆された.生物学的活性を解析した結果,DFには癌細胞コロニーを濃度依存的に解離し,細胞運動能を増強させ,さらに,fibronectinに対する接着能を選択的に増強し,MATRIBGELに対する細胞浸潤能を増強する作用が存在した.本研究の結果から,DFは膵臓癌の浸潤転移機構と密接に関連した生物学的特性を有する新しい因子であることが示唆された.
索引用語
cancer cell dissociation factor (DF), metastasis, pancreatic cancer
別刷請求先
江上 寛 〒860-8556 熊本市本荘1-1 熊本大学医学部第2外科
受理年月日
1999年12月22日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|