Degradable starch microspheres併用肝動注化学塞栓療法により腫瘍が縮小し肝切除した胃癌肝転移の1例

岸渕　正典, 柳生　俊夫, 山崎　誠, 安井　昌義, 西　敏夫, 川崎　勝弘, 弥生　恵司, 森　武貞

市立貝塚病院外科

　胃癌肝転移は予後不良であり，有効な治療法はいまだ確立されていない．今回，degradable starch microspheres（DSM）を用いた肝動注化学塞栓療法が奏功し，切除容易となった胃癌肝転移の1例を経験した．症例は61歳の女性で，60歳時に早期胃癌（sm1，n0）にて幽門側胃切除術を施行した．術後8か月目にCEAが32ng/mlと上昇し，腹部CTで肝内側区域に低吸収域の単発性腫瘍を認め，胃癌の肝転移と診断した．腫瘍は直径9cmまでに急速に増大し，肝切除困難であったため，3回のDSM+mitomycin Cによる肝動注化学塞栓療法を施行した．腫瘍径は3cmまで著明に縮小したため，肝内側区域切除術を施行した．病理組織検査で腫瘍は線維化で置換され，周辺に腫瘍細胞をごく少量認めるのみであった．DSM併用肝動注化学塞栓療法は血管増生を伴う肝転移に対する有用な手段になりえると考えられた．

索引用語
degradable starch microspheres, liver metastasis of gastric cancer, Intra-arterial chemoembolization

別刷請求先
岸渕　正典　〒597-0015　貝塚市堀3-10-20　市立貝塚病院外科

受理年月日
2000年2月23日

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