原著
胃癌術後イレウスの実態と縮小手術による予防効果
梨本 篤, 諸田 哲也, 藪崎 裕, 土屋 嘉昭, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
新潟県立がんセンター新潟病院外科
胃癌術後イレウスの実態を明らかにするとともに,縮小手術による術後イレウスの予防効果を検討した.対象は1996年12月までの10年間に経験した初発胃癌切除2,314例で,術後イレウスは入院治療を必要としたものとした.術後イレウスは121例(5.2%)で,60例に手術が施行された.腸閉塞発生回数は平均1.8(1~10)回であり,胃癌手術から腸閉塞手術までは中央値181日,1年以内59.0%,3年以内85.2%であった.イレウスに対する術式は,癒着剥離術63.4%,小腸部分切除術33.3%,が主体であった.術後イレウスの発生率は幽門側切除5.1%,全摘6.2%,噴門側切除9.1%,部分切除0%であった.リンパ節郭清D1以下群はD2以上群より低率であり,大網温存群は大網切除群より低率であった.一方,幽門側切除早期癌の遠隔成績は,大網切除の有無,リンパ節郭清度別に差を認めなかった.早期胃癌に対しては可及的に,リンパ節郭清度の縮小や大網温存を図ることが,術後イレウスの減少や術後のQOL向上に寄与するものと思われた.
索引用語
ileus after gastrectomy, limited surgery for early gastric cancer, omentum preserving procedure for early gastric cancer, lymph node dissection for early gastric cancer
日消外会誌 33: 1455-1460, 2000
別刷請求先
梨本 篤 〒951-8566 新潟市川岸町2-15-3 新潟県立がんセンター新潟病院外科
受理年月日
2000年4月26日
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