症例報告
直腸癌に合併した無症候性傍大動脈異所性褐色細胞腫の1例
作左部 大1), 吉岡 浩1), 丹羽 誠1), 小棚木 均2), 浅沼 義博2), 杉田 暁大3)
公立横手病院外科1), 秋田大学第1外科2), 同 第2病理3)
褐色細胞腫と消化器癌の合併例の報告はまれである.今回,われわれは直腸癌に合併した無症候性異所性褐色細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は60歳の女性.下腹部痛,便通異常のため受診し,大腸内視鏡検査,注腸造影検査で直腸癌と診断された.術前の腹部CT検査で下腸間膜動脈根部近傍の大動脈周囲に腫瘍を認め,リンパ節転移と診断した.術中,大動脈周囲の腫瘍摘出時に著しい高血圧と摘出後の血圧低下を認めた.術後の病理組織学的検査で直腸癌と異所性褐色細胞腫と診断された.褐色細胞腫は術前および術中に適切な血圧管理および輸液療法を行わないと危険であり,時に致命的となる.直腸癌にともなう大動脈周囲腫瘍も認めてもリンパ節転移とはかぎらず,その腫瘍の大きさや部位,第1群リンパ節腫脹の有無などからその他の原因や疾患も考慮する必要があると考えられた.
索引用語
extra-adrenal pheochromocytoma, rectal cancer
日消外会誌 33: 1534-1538, 2000
別刷請求先
作左部 大 〒010-1495 秋田市上北手猿田字苗代沢222-1 秋田赤十字病院外科
受理年月日
2000年4月26日
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