症例報告
長時間の砕石位によりcrush syndromeとなった1例
軽部 友明, 阿部 恭久, 西郷 健一, 青山 博道, 平澤 博之*, 落合 武徳**, 奥山 和明
公立長生病院外科, 千葉大学救急医学*, 千葉大学第2外科**
長時間の砕石位によりcrush syndromeとなった1例を経験した.症例は66歳の男性,1995年,直腸癌に対し低位前方切除術施行,1998年8月3日直腸癌骨盤内再発により腹会陰式直腸切断術を施行.手術開始より砕石位とし,会陰部操作の際下肢の屈曲を強化,その1時間後より血圧低下,脈拍上昇をきたした.手術時間は14時間33分(出血量4,390g).手術終了より数時間後に下肢の変色に気づき,乏尿を認め血清Cre,K値は上昇し続けた為,持続的血液濾過透析を開始,第22病日に透析を離脱,全身状態が改善した.腓骨神経麻痺が残り現在は杖歩行可能である.文献的検索では砕石位によるcompartment syndromeのうち筋膜切開施行29例中,腎不全発症率は0~20%と低率であるが,神経麻痺は75%以上に認めた.砕石位手術の際は,crush syndromeを念頭にいれ,砕石位は必要時のみに留め,予防に努めることが重要であると思われた.
索引用語
crush syndrome, compartment syndrome, lithotomy position
日消外会誌 33: 1549-1553, 2000
別刷請求先
軽部 友明 〒260-8717 千葉市中央区仁戸名町666-2 千葉県がんセンター消化器外科
受理年月日
2000年3月22日
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