原著
上部小彎進行胃癌に対する脾門リンパ節郭清の適応に関する検討
野村 尚, 大山 繁和, 太田 惠一朗, 松原 俊樹, 高橋 孝, 中島 聰總, 武藤 徹一郎
癌研究会附属病院消化器外科
上部進行胃癌では膵脾合併切除や脾摘のかたちで脾門リンパ節郭清が行われるが,リンパ流の観点からすると小彎領域からの脾門リンパ節転移は考えにくい.小彎病変に脾門リンパ節郭清が必要かを検討した.脾門リンパ節郭清を伴う上部胃癌根治切除515例のうち,脾門リンパ節転移陽性は68例,13.2%で,転移陽性例の腫瘍占居部位は,大彎を占居する,または大彎側に病変が及ぶ症例が57例(83.8%)と多数であった.小彎側のみを占める症例を11例(16.2%)と少数ながら認めたが,小彎病変11例は全例に小彎リンパ節転移を認め,うち10例は転移の所見が著明であった.また11例中,腫瘍径40mm未満の病変は1例のみで,この1例には明らかな小彎リンパ節転移を認めた.以上より胃上部小彎病変では,小彎リンパ節に明らかな転移を認めず,腫瘍径40 mm未満の場合は脾門リンパ節郭清の省略が可能と考えられた.
索引用語
gastric cancer in the upper third of the stomach, splenic hilar lymphnodes, pancreatosplenectomy, splenectomy
日消外会誌 33: 1609-1614, 2000
別刷請求先
野村 尚 〒990-9585 山形市飯田西2-2-2 山形大学医学部第1外科
受理年月日
2000年6月28日
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