症例報告
肝予備能の質的評価法としてICGクリアランスメータが有用であった肝細胞癌の1例
保谷 芳行, 岡部 紀正, 鈴木 旦麿, 黒崎 哲也, 串田 則章, 山崎 洋次*
神奈川県衛生看護専門学校附属病院外科,東京慈恵会医科大学外科学講座第1*
症例は63歳の男性.腹部超音波検査で肝S6を中心に腫瘍陰影を認めた.蛋白合成能,凝固系能などの肝予備能検査と比較し,R15(ICG R15)は20%と高値を示した.血中ICG消失曲線では,通常の肝硬変ではみられない高い2ndピークを認め,門脈系―大循環シャントの存在が推察された.腹部血管造影では,肝後区域にhyper vascularな腫瘍陰影が存在し,周囲に娘結節を多数認めた.また,肝動脈―門脈シャントが存在し,門脈圧の上昇が示唆された.そのために門脈の左右分岐より末梢は造影されず,脾静脈系から下大静脈への大きな側副血行路が存在した.肝動脈後区域枝に塞栓術を行ったところ,血中ICG消失曲線の高い2ndピークは消失し,R15も12%に改善した.血中ICG消失曲線の特徴から,質的な病態を推察し,正確な肝細胞予備能を把握することが可能であった.
索引用語
indocyanine green, pharmakokinetics of indocyanine green, indocyanine green clearance meter
日消外会誌 33: 1662-1665, 2000
別刷請求先
保谷 芳行 〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科学講座第1
受理年月日
2000年5月23日
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