症例報告
嚢腫破裂により腫瘍マーカーが高値を示した脾類上皮嚢腫の1例
伊澤 光, 金 成泰, 西原 政好, 吉田 哲也, 戎井 力, 金井 俊雄, 藤本 高義
兵庫県立西宮病院外科
脾嚢腫は本邦で500例余りが報告されているが,類上皮嚢腫はその約10%で比較的まれな疾患である.今回,嚢腫破裂による急性腹症で発症し,腫瘍マーカーが異常高値を呈した非常にまれな脾類上皮嚢腫の1症例を経験したので報告する.症例は24歳の女性,下腹部痛を主訴として当院受診し,精査加療の目的で婦人科に入院した.腹部超音波,CTおよびMRI検査にて下腹部に多量の腹水と脾臓内に不整形嚢胞を認め,脾嚢胞破裂による腹膜炎と診断した.血中CEA,CA19-9が高値のため消化管を中心に全身検索を行ったが,他には異常所見がなく,その間に臨床症状も改善した.その後,経過観察中に腫瘍マーカー値はすべて正常化したが,脾嚢胞は増大し再破裂が危ぐされたため,脾摘術を施行した.手術所見では脾門部を中心に長径9.5cmの嚢胞を認め,病理組織検査で扁平上皮からなる壁を有する類上皮性嚢腫と診断した.また,嚢腫内液のCEA,CA19-9は高値であった.
索引用語
rupture of splenic epidermoid cyst, carcinoembryonic antigen, carbohydrate antigen 19-9
日消外会誌 33: 1696-1700, 2000
別刷請求先
伊澤 光 〒662-0918 西宮市六湛寺町13-9 兵庫県立西宮病院外科
受理年月日
2000年6月28日
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