症例報告
腸管切除および狭窄形成術を施行した虚血性小腸炎の1例
羽田 丈紀, 河野 修三, 織田 豊, 小林 功, 池上 雅博*, 山崎 洋次**
国立療養所東宇都宮病院外科, 東京慈恵会医科大学病理*, 同 外科**
患者は52歳の男性.1998年4月初旬より腹痛を訴えた.小腸造影検査と下部消化管内視鏡検査で回腸に長さ1cmと10cmの狭窄を認めた.保存的治療で症状が改善しなかったため手術を施行した.手術は1cmの狭窄部に狭窄形成術を,10cmの狭窄部に切除術を施行した.切除標本の肉眼所見では腸管壁の肥厚をともなった求心性管状狭窄と全周性潰瘍を,病理所見では炎症性肉芽組織と高度線維化を主に粘膜下層に認めた.以上より虚血性小腸炎と診断した.虚血性小腸炎はまれな疾患で,本邦では40例の報告があるのみである.主な治療は手術で,狭窄部腸管の切除が一般的であるが本症例の経験から狭窄部が短い場合は狭窄形成術でも治癒可能であることが示唆された.
索引用語
ischemic enteritis, ischemic stenosis of the small intestine, stricturoplasty
日消外会誌 33: 1831-1834, 2000
別刷請求先
羽田 丈紀 〒329-1104 栃木県河内郡河内町下岡本2160 国立療養所東宇都宮病院外科
受理年月日
2000年7月25日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|