症例報告
胃癌に併存した肝結核腫の1例
一戸 和成, 川崎 仁司, 赤石 節夫, 西 隆, 梅原 豊, 佐々木 睦男
弘前大学医学部第2外科
胃癌に併存し,術前肝転移との鑑別に難渋した肝結核腫の1例を経験したので報告する. 症例は78歳の女性.右前頸部に発赤が出現,皮膚結核の診断を得た.同時に行われた消化管精査にて進行胃癌の診断を得た.検査成績においてはツベルクリン反応は強陽性で,胸部X線写真では肺結核を思わせる活動性陰影は認められなかった.術前腹部造影CTで,肝S8に直径1cmのlow density area,MRIでring状のenhancementを呈する肝腫瘤性病変が認められ,肝転移が強く疑われた.幽門側胃切除,肝部分切除を施行.組織学的には,肝病巣は乾酪壊死,Langhans巨細胞,類上皮細胞が認められ,肝結核腫と診断された. 肝結核腫と肝転移は画像上類似した所見を呈することがあり,術前に画像所見のみで両者を鑑別することは困難である.結核症の有病者において,肝腫瘤性病変の鑑別に際し肝結核腫は留意すべき疾患のひとつであると考える.
索引用語
gastric cancer, hepatic tuberculoma, magnetic resonance imaging
日消外会誌 33: 1895-1899, 2000
別刷請求先
一戸 和成 〒036-8562 弘前市在府町5 弘前大学医学部第2外科
受理年月日
2000年9月20日
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