症例報告
肝切除後8年目に腹膜再発し長期生存が得られた肝細胞癌の1例
白子 隆志1), 横尾 直樹1), 北角 泰人1), 二村 学2), 森 茂2), 福井 貴巳1), 岡本 清尚3)
高山赤十字病院外科1), 同 病理3), 岐阜大学医学部第2外科2)
切除術後7年目に残肝再発,その1年後に腹膜再発し,転移巣部分切除と腹腔内化学療法・経口免疫化学療法で長期生存した肝細胞癌の1例を経験した.患者は71歳の女性.1989年には肝細胞癌で外側区域切除を,1996年に断端再発し再開腹・内側区域切除を受けた.1年後に腹腔内腫瘤を認め,穿刺細胞診で肝細胞癌腹膜再発が疑われ,再々開腹術を施行した.腹腔内に腹水貯留と大網および腸間膜に多数の播種巣を認め,肝細胞癌腹膜再発と診断した.転移巣部分切除と腹腔リザーバーを留置しMMCの腹腔内投与を約1年間,経口UFT・PSK投与を27か月間継続したが,術後30か月目にDICにて死亡した.剖検所見で,子宮・腸間膜に肝細胞癌の播種を認めたが肝内再発は認めず,主死因は腹膜播種と多発性肝膿瘍によるDICと診断された.肝細胞癌腹膜播種症例でも,播種巣部分切除と化学療法の併用で良好なQOL下に長期生存できる可能性が示唆された.
索引用語
hepatocellular carcinoma, peritoneal dissemination, adjuvant immuno-chemotherapy
日消外会誌 33: 1915-1919, 2000
別刷請求先
白子 隆志 〒506-8550 高山市天満町3-11 高山赤十字病院外科
受理年月日
2000年9月20日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|