症例報告
慢性膵炎に対する十二指腸温存膵頭切除術・膵空腸側々吻合術後11年目に発症した肝膿瘍破裂の1例
末永 光邦, 徳重 正弘, 久保 文武, 福留 哲朗, 肝付 兼達, 愛甲 孝*
曽於郡医師会立病院外科, 鹿児島大学第1外科*
今回,我々は慢性膵炎の減痛目的で十二指腸温存膵頭切除術・膵空腸側々吻合術を施行され,その11年後に敗血症を呈し,緊急手術を要した肝膿瘍の1例を経験した.症例は49歳の男性.主訴は発熱・悪寒であり,来院時は敗血症性ショックの状態であった.精査にて肝膿瘍破裂に伴う汎発性腹膜炎を疑い,緊急手術を施行した.開腹にて肝膿瘍の破裂を確認し,腹腔内洗浄と腹腔ドレナージを施行した.また,残存する肝膿瘍に対しては,経皮経肝的膿瘍ドレナージ(以下,PTADと略記)を施行し,膿瘍の消退を認めた.十二指腸温存膵頭切除術は慢性膵炎患者の難治性疼痛に対して有効とされてきた.一方,膵空腸吻合術後数年後の腹腔内膿瘍発生との因果関係を示唆する報告も認められる.しかし,その機序については解明されていないため,禁酒の徹底化と術後の長期経過観察による腹腔内膿瘍の早期発見が慢性膵炎の重篤な合併症予防に必要である.
索引用語
liver abscess, pancreatojejunostomy, chronic pancreatitis
別刷請求先
末永 光邦 〒890-8520 鹿児島市桜ヶ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
2000年12月19日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|