症例報告
腸重積症との鑑別が困難であった腸管出血性大腸菌O157感染症の1例
石田 祐一, 小林 進, 原 章彦, 山崎 洋次, 青木 照明
東京慈恵会医科大学外科
症例は20歳の女性.嘔吐と右中下腹部痛を主訴に来院した.初診時,右中下腹部に著明な圧痛・反跳圧痛を認め,同部位に棍棒状で弾性軟の腫瘤を触知した.腹部CTと腹部超音波検査で腸重積様の画像を呈したため開腹手術を施行した.開腹時,肉眼的に腸重積の所見は認めなかったため虫垂切除を施行し手術を終了した.手術後2日目の便培養からEscherichia coli O157(O157)が検出された.O157による出血性大腸炎では,その多くが初発症状として腹痛を伴う血便が出現する.O157感染症でも血便のみならず下痢症状も伴わない場合,画像上腸重積症と類似した像を呈するため鑑別が困難となることがあると考えられた.詳細な家族歴の聴取,迅速かつ適切な便培養検査の導入と超音波カラードプラ法が鑑別の補助になる.
索引用語
Escherichia coli O157, verotoxin, hemorrhagic colitis
別刷請求先
石田 祐一 〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科
受理年月日
2000年11月29日
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