原著
肝細胞癌における術前局在区域診断の検討
片桐 聡, 高崎 健, 山本 雅一, 大坪 毅人
東京女子医科大学附属消化器病センター外科
はじめに:肝腫瘍に対してグリソン鞘一括処理による系統的肝切除を行うためには,腫瘍の局在区域を同定することが不可欠である.今回,肝細胞癌の術前局在区域診断能について検討した.方法:術前診断として US,CT,angiography を施行し,さらに portal angio-echo(以下,PAE)を行った肝細胞癌111結節を対象とした.グリソン鞘一括処理による系統的肝切除の術中所見を正診として,肝3区域分けを基本とした区域境界を3箇所に設定し,境界別,検査別の局在区域診断正診率とPAE誤診例について検討した.結果:局在区域診断正診率は,PAE が90.1%で他の検査との間で有意差を認めた.しかしながら,区域境界別では中区域右区域の下領域境界では PAE と他の検査間に有意差を認めず,また他のいずれの検査においてもこの境界の正診率が最も低くかった.PAE誤診例は11結節認めたが,8結節が中区域右区域の下領域境界であった.考察:portal angio-echo は肝細胞癌局在区域診断に有用である.しかしながら,中区域右区域の下領域境界診断に関しては中区域切除標本の検討から,右葉肝門側亜区域を支配するグリソン鞘3次分枝に多くの分岐形態を認めるため,この境界の局在区域診断には注意を払う必要があると思われた.
索引用語
hepatocellulr carcinoma, preoperative segmental diagnosis, portal angio-echo, systematized hepatic resection
別刷請求先
片桐 聡 〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1 東京女子医科大学附属消化器病センター外科
受理年月日
2001年3月28日
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