症例報告
無痛性腫瘤にて発見された横行結腸間膜放線菌症の1例
稲葉 聡, 新居 利英, 矢吹 英彦, 唐崎 秀則, 富田 一郎, 紀野 泰久, 小原 充裕, 里 悌子*
遠軽厚生病院外科, 旭川厚生病院病理科*
無痛性の非炎症性腹部腫瘤にて発見された横行結腸間膜放線菌症の1例を経験した.症例は72歳の女性.主訴は全身倦怠感,食欲不振.左下腹部に圧痛のない手拳大の硬い腫瘤を触知した.白血球数,CRP は正常範囲で,便潜血反応(-)であった.CT では左下腹部の腹壁直下に,繊維性変化を伴い,不均一に enhance される腫瘤像と,近接する横行結腸壁の肥厚を認めた.注腸X線検査では横行結腸に鋸歯状の全周性不整狭窄像を認めた.経過中に発熱,圧痛を認めたため脂肪織炎などの炎症性病変に伴う横行結腸狭窄を考えたが,悪性病変も否定できなかった.腹壁に一部癒着した横行結腸の壁外性腫瘤を認め,横行結腸部分切除術を施行した.病理学的には放線菌塊が認められ,横行結腸間膜放線菌症と診断された.本症は術前診断が困難であるが,腹部腫瘤の鑑別診断として念頭におく必要がある.また,外科的切除後は原則的には抗生物質の長期投与は必要ないと思われた.
索引用語
transverse colon actinomycosis, painless abdominal tumor
別刷請求先
稲葉 聡 〒090-0494 北海道紋別郡遠軽町大通北3-1-5 遠軽厚生病院外科
受理年月日
2001年3月28日
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