症例報告
前腸からの発生が示唆された食道・胃にまたがる噴門部消化管重複症の1例
田中 千弘, 横尾 直樹, 北角 泰人, 白子 隆志, 福井 貴巳, 吉田 隆浩, 浦 克明, 濱洲 晋哉, 岡本 清尚*
高山赤十字病院外科, 同 病理*
病理組織学的検査にて,前腸からの発生が示唆された食道・胃にまたがる噴門部消化管重複症の1手術例を経験したので報告する.症例は35歳の女性.検診の上部消化管透視で,噴門部直下後壁の粘膜下腫瘍を疑われた.腹部US・CT・MRI検査では,食道壁・胃壁に接する約5cm大の単房性嚢胞性病変を認めた.超音波内視鏡検査・99mTcシンチグラム所見より,胃重複症の術前診断にて手術を施行した.腫瘤は,食道・胃の両方にまたがり,約2×1.5cmの範囲で壁を共有していた.迅速病理検査にて,胃重複症の確定診断を得,悪性所見を認めなかったため,腫瘤核出術に留めた.術後は順調に経過し,何らの消化器愁訴もなく退院となった.内容液中のCEA・CA19-9値は高値を示したが,細胞診の結果はclass Iであった.病理組織学的検査では,内壁に幽門腺類似構造を含む上皮と,その下層に平滑筋層を認めた.上皮成分には線毛円柱上皮も認められ,前腸からの発生が示唆された.
索引用語
alimentary tract duplication, ciliated columnar epithelium, foregut
日消外会誌 34: 1400-1404, 2001
別刷請求先
田中 千弘 〒506-0025 高山市天満町3-11 高山赤十字病院外科
受理年月日
2001年5月23日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|