症例報告
上腸間膜動脈根部より下腸間膜動脈が分岐する1症例
柿原 直樹, 高橋 滋, 土橋 洋史, 竹中 温, 泉 浩, 藤井 宏二, 井川 理, 飯塚 亮二, 宮田 圭悟, 松村 博臣
京都第二赤十字病院外科
下腸間膜動脈は腹腔内の動脈の中では比較的分岐異常の少ない動脈である.今回,我々は上腸間膜動脈根部より下腸間膜動脈が分岐する1症例を経験したので報告する.症例は66歳男性,下血を主訴に来院し精査の結果直腸癌の診断であった.術前に行った腹部血管造影において,腹腔動脈幹は認められず,左胃動脈,脾動脈が大動脈から直接分岐し,上腸間膜動脈から総肝動脈が分岐するhepatomesenteric typeであった.下腸間膜動脈は上腸間膜動脈の根部より直接分岐していた.当院における過去20年間の腹部血管造影3182例を検討したところ,下腸間膜動脈根部の分岐異常は,欠損症1例(0.03%),内臓逆位に伴う根部の走行異常2例(0.06%),今回の分岐形態は2例(0.06%)であった.それ以外は下腸間膜動脈は全例通常の3腰椎の高さで左側に分岐しており,今回の症例はきわめてまれな分岐異常であった.
索引用語
inferior mesentiric artery, anatomical variation
日消外会誌 34: 1442-1446, 2001
別刷請求先
柿原 直樹 〒602-8026 京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355-5 京都第二赤十字病院外科
受理年月日
2001年5月23日
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