症例報告
穿孔を来した腸結核症の1例
海老原 裕磨1)3), 鈴木 康弘1), 狭間 一明1)3), 高橋 基夫1), 藤田 美悧2), 加藤 紘之3)
新日鉄室蘭総合病院外科1), 同 病理2), 北海道大学腫瘍外科3)
近年,我が国における結核患者数は増加傾向を示しており,それに伴い腸結核症に遭遇する機会も増加している.今回,我々は穿孔を来した腸結核症の1例を経験したので報告する.症例は54歳の男性で,腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.るいそう著明で,胸部単純X線にて両側上肺野に侵潤影および一部に空洞形成を認めた.また,腹部は板状硬であり汎発性腹膜炎と診断し同日,緊急手術を施行した.小腸から大腸にかけて合計26か所の多発性輪状潰瘍を認め,うち1か所が穿孔していた.穿孔部腸管の切除を施行し全身管理を行ったが術翌日に突然の心停止を来たし死亡した.部検の結果,肺結核症,腸結核,および粟粒性結核症が確診された. 今後,結核患者にあっては急性腹症の鑑別疾患として腸結核穿孔も念頭に置く必要があるものと考えられた.
索引用語
intestinal tuberculosis, perforation, miliary tuberculosis
日消外会誌 34: 1447-1451, 2001
別刷請求先
海老原 裕磨 〒060-8648 札幌市北区北14条西5丁目 北海道大学医学部腫瘍外科学講座
受理年月日
2001年4月25日
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