術後補助療法が奏効したと思われる長期生存を得た多発肝転移を伴う胃癌の1例

徳力　俊治, 西田　久史, 亀山　謙, 坂田　晋吾, 黒柳　洋弥, 大谷　哲之, 坂井　義治, 土屋　宣之, 小泉　欣也

国立京都病院外科

　症例は67歳の男性，腹部不快感を訴え，1991年11月当院受診，精査にて胃幽門前庭部に2型進行癌を指摘され，1992年3月手術を施行した．術前の診断では肝転移（－）なるも，術中迅速病理診断にて多発肝転移が判明し，胃亜全摘術，肝動脈内カテーテル留置術を施行した．術後5-FU，ADM，MMC，レンチナンによる肝動注を反復施行し，画像上肝転移の出現は認められなかった．1995年より右肺下葉に単発転移巣が出現し，腫瘍の増大にて喀血も来したため，1997年4月から放射線照射を施行し，その結果腫瘍は縮小，症状も軽快した．1998年3月肺転移巣が再度増大して喀血などの症状も増悪し，ロイコボリン，5-FUによる全身化学療法を行い，症状の軽快を得た．1999年6月小脳転移巣が出現し，術後7年9か月目に死亡した．stage IV胃癌の予後は極めて不良であるが，補助療法にて長期生存しうる可能性も本例にて示唆された．

索引用語
gastric carcinoma, liver metastasis, chemotherapy

別刷請求先
徳力　俊治　〒516-0000　三重県度会郡御薗村高向810番地　山田赤十字病院耳鼻咽喉科

受理年月日
2001年6月26日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です