症例報告
転移性肝癌と術前診断された肝蛭症に対しマイクロ波凝固術が著効した1例
平原 典幸, 岩崎 信治*, 渡部 広明, 仁尾 義則*
津和野共存病院外科, 島根医科大学第1外科*
症例は46歳の女性.左乳房腫瘤を主訴に当院受診.左C領域に約2cm大の弾性硬,境界不明瞭な乳房腫瘤を触知.来院時,白血球数は正常であったが,好酸球17%と軽度上昇し,肝機能障害を認めた.転移巣検索にてエコー上,肝右葉に,3.5×2.5cmの境界不明瞭な低エコー域として,単純CTでは,LDAとして描出される腫瘤を認めた.同腫瘤はフェリデックスMRIでは,高信号域,血管造影では,境界不鮮明な淡い濃染像として,CTAPではLDAとして描出された.以上,左乳癌および転移性肝癌の診断にて乳房切除術および後者に対しマイクロ波凝固術(MCT)を施行.肝生検組織にて高度の好酸球の浸潤を認めたため肝寄生虫疾患を疑い,血清免疫学的検査より,肝蛭症の診断を得た.本来肝蛭症の治療法はブラジカンテルの投与であるが,術後肝機能,好酸球は正常化し,2年経過した現在も再発を認めず,MCTにて根治しえたと考えられた.
索引用語
metastatic liver tumor, fascioliasis, microwave coagulationtherapy
日消外会誌 34: 1620-1624, 2001
別刷請求先
平原 典幸 〒699-5604 島根県鹿足郡津和野町大字森村ロ141 津和野共存病院外科
受理年月日
2001年7月30日
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