症例報告
Hemosuccus pancreaticusと胃穿破を合併した膵仮性嚢胞内出血の1例
諸角 強英, 宮崎 洋史, 古川 秋生, 仲丸 誠, 伊東 英輔, 河島 俊文, 香野 日高
公立福生病院外科
症例は47歳の男性.多量の飲酒歴と急性膵炎の既往がある.左上腹部痛と吐血のため入院した.内視鏡では胃体中部後壁の潰瘍から出血を認めクリップにて止血した.腹部CTでは胃内と膵尾部の仮性嚢胞内に血液の貯留を認めた.腹部血管造影では脾動脈分枝から膵仮性嚢胞内,さらに主膵管次いで十二指腸への出血を認めバルーンカテーテルにて脾動脈を閉塞した.膵仮性嚢胞内出血がhemosuccus pancreaticusと胃穿破を合併したものと診断し,膵体尾部切除術・脾合併切除術・胃部分切除術を施行した.アルコール常飲者の急性膵炎の多数例は慢性膵炎に移行し,形態学的な異常所見の存在も高率で,仮性嚢胞内出血のリスクが高い.さらに近接臓器へ穿破すると消化管出血の原因となる.治療として出血時には塞栓術が有効であるが,後に手術が必要となる症例が多い.また,慢性膵炎に胃潰瘍を合併する症例では仮性嚢胞の胃壁穿破との鑑別が必要である.
索引用語
hemosuccus pancreaticus, hemorrhagic pancreatic pseudocyst, gastrointestinal bleeding
日消外会誌 34: 1625-1629, 2001
別刷請求先
諸角 強英 〒197-8511 福生市加美平1-6-1 公立福生病院外科
受理年月日
2001年7月30日
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