症例報告
von Recklinghausen病に合併し,肝右葉,下大静脈とともに切除しえた後腹膜悪性神経鞘腫の1例
塩崎 滋弘, 松川 啓義, 青木 秀樹, 小野田 正, 大野 聡, 二宮 基樹, 桧垣 健二, 池田 俊行, 小林 直広, 高倉 範尚
社会保険広島市民病院外科
von Recklinghausen病に合併した巨大後腹膜悪性神経鞘腫に対して,肝右葉および下大静脈とともに切除しえた1例を経験した.症例は29歳の女性.父および患者自身がvon Recklinghausen病.右側腹部腫瘤および疼痛のため受診し,精査加療目的にて入院した.腹部CTでは後腹膜に下大静脈を強く腹側に圧排する径約25cmの腫瘤を認めた.下大静脈造影では第3腰椎の高さから造影されず,側副血行路の発達を認めた.後腹膜悪性神経鞘腫と診断し摘出術を施行した.手術はまず前方アプローチで肝離断を行い,肝右葉,下大静脈とともに腫瘍を摘出した.下大静脈の血行遮断および切離にても循環動態の変動を認めず,下大静脈の再建は行わなかった.下肢腫脹を認めず術後24日目に退院した.後腹膜悪性神経鞘腫はまれな疾患で自覚症状に乏しく,特にvon Recklinghausen病に合併する2次性のものは予後不良である.治療は外科的な完全切除が必要である.
索引用語
malignant schwannoma, von Recklinghausen's disease, retroperitoneal tumor
日消外会誌 34: 1630-1634, 2001
別刷請求先
塩崎 滋弘 〒730-8518 広島市中区基町7-33 社会保険広島市民病院外科
受理年月日
2001年6月26日
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