症例報告
転移性痔瘻癌の1例
徳原 克治, 山中 英治, 伊東 大輔, 小柴 孝友, 佐藤 正人, 小切 匡史
市立岸和田市民病院外科
患者は69歳の男性.1995年頃より,肛門周囲の皮膚からの排膿,出血を繰り返し,1999年3月頃には大豆大の腫瘤が出現した.2000年初めより排膿,出血が頻回となり腫瘤が増大してきたため,同年5月当科を受診した.肛門3~5時方向にかけて表面に潰瘍を有する38×27mm大の腫瘤が存在,その一部を生検したところ中分化腺癌と判明した.また大腸内視鏡で,肛門縁より20cm口側のS状結腸に2’型進行癌を認め,生検の結果は中分化腺癌であった.両病巣の組織像が一致したことより,S状結腸癌とその管腔内転移による転移性痔瘻癌と考え,腹仙骨式直腸切断術を施行した.痔瘻は日常診療においてしばしば遭遇する疾患であるが,痔瘻に癌が発生した場合は転移性痔瘻癌も念頭に置き大腸検査を施行する必要がある.また大腸癌患者で痔瘻を有する場合は,痔瘻への転移も考慮にいれた厳重な経過観察が必要であると考えられた.
索引用語
colon cancer, fistula cancer, anal fistula
日消外会誌 34: 1690-1694, 2001
別刷請求先
徳原 克治 〒596-8501 岸和田市額原町2番地 市立岸和田市民病院外科
受理年月日
2001年6月26日
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