症例報告
上腸間膜静脈瘤を介した門脈―大静脈シャントの外科的遮断により軽快した猪瀬型肝性脳症の1例
水野 崇志, 高 済峯, 小林 豊樹, 鹿子木 英毅, 中島 祥介
奈良県立医科大学第1外科
症例は78歳の女性.昭和61年よりB型慢性肝炎で経過観察されており,平成8年8月頃より,200μg/dl前後の高アンモニア血症を伴う肝性昏睡が頻回に出現.精査の結果,上腸間膜静脈瘤の形成と,下大静脈への短絡を認めた.脳症は内科的治療に抵抗性で,平成11年4月22日,短絡路遮断目的に手術を施行.上腸間膜静脈は門脈本管流入部付近より径2cm大の静脈瘤を形成,末梢側は右卵巣静脈を介して下大静脈へと短絡していた.短絡路の試験的クランプによる門脈圧の上昇が160mmH2Oから240mmH2Oに留まることを確認した後,短絡路の遮断および静脈瘤の切除を施行した.ドップラーUSにて門脈血流量は術前に比較して著明に改善し,術後に血中アンモニア値は50μg/dl以下に低下,肝性脳症も完全に消失した.肝血流量の増加によると思われる肝予備能の改善も見られ,現在元気に日常生活を送っている.
索引用語
superior mesentric varices, porto-systemic shunt, hepatic encephalopathy
別刷請求先
水野 崇志 〒634-0813 橿原市四条町840 奈良県立医科大学第1外科
受理年月日
2001年10月31日
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