症例報告
虫垂S状結腸瘻の1例
諏訪 裕文, 馬場 信雄, 出村 公一, 今村 卓司, 石上 俊一, 田村 淳, 高本 充章, 小川 博暉, 雑賀 興慶*, 坂梨 四郎
大津赤十字病院外科, 同 病理*
症例は64歳の男性で,下腹部痛と発熱を主訴に来院した.注腸造影検査でS状結腸の壁不整と同部からのバリウムの漏出像を認めた.骨盤CTでは,S状結腸と回盲部の近傍にバリウムの貯留と考えられる高吸収域を認めたが,明らかな腫瘤は指摘されなかった.1か月半の経過観察で臨床症状は軽減したが,悪性疾患も否定できず開腹手術を施行した.虫垂に著明な炎症所見が見られ,その先端が強固にS状結腸と癒着していたため虫垂とS状結腸を一塊として摘出した.摘出標本では虫垂の先端とS状結腸の間に,ゾンデが通る程度の細い瘻孔を認めた.病理組織像は,虫垂に強度の炎症が認められ,虫垂炎が原因となりS状結腸へ瘻孔を形成したものと考えられた.虫垂S状結腸瘻は良性の場合が多く,今後は慎重な経過観察や腹腔鏡下手術を含めた治療を考慮すべきであると考えられる.
索引用語
appendix, sigmoid colon, fistula
別刷請求先
諏訪 裕文 〒520-8511 大津市長等1-1-35 大津赤十字病院外科
受理年月日
2001年10月31日
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