原著
最近5年間の膵切除術後腹腔内出血の検討
杉本 博行, 金子 哲也, 竹田 伸, 井上 総一郎, 中尾 昭公
名古屋大学第2外科
手術手技の向上,周術期管理の進歩により膵切除術後の合併症は減少してきたが,現在でも,縫合不全,膵液漏などにより腹腔内出血を引き起こし致命的となる場合がある.また近年,良性疾患においてもさまざまな膵切除術式が行われているがその場合も同様な合併症を経験する.そこで最近の膵切除後の出血例の特徴とその対処法につき検討した.対象:1996年1月から2000年12月に当教室にて施行した膵切除術90例を対象とした.成績:術後腹腔内出血は6例(6.7%)で,内2例で再出血を認めた.疾患別では,膵癌1例,胆管癌1例,膵管内乳頭腺腫3例,膵炎1例で,良性疾患で多い傾向にあったが統計学的有意差は認めなかった(p=0.0555).術式別では,膵頭十二指腸切除2例,幽門輪温存膵頭十二指腸切除1例,膵分節切除3例で膵分節切除で有意に多く認めた(p=0.0367).再建方法,吻合法による差は認めなかった.縫合不全の有無別では症例全体では有意差は認めなかった(p=0.0787)が術直後の出血を除くと縫合不全群で有意に出血が多かった(p=0.0462).出血後の処置は,開腹術を5例,6回に,TAEを2例,2回に行った.予後は良好で全例歩行退院可能であった.結語:膵分節切除において出血の頻度が高い特徴があった.開腹術による予後は不良とされていたが,出血後,開腹術も速やかに施行可能であればその転帰は良好であった.
索引用語
hemorrhage, leakage, complication, pancreatectomy
別刷請求先
杉本 博行 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学第2外科
受理年月日
2001年11月27日
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